● 松尾様 (松尾大社)

【松尾大社】
「松尾様」とは、酒蔵で祀られているいわゆる“酒造りの神様”のことです。

蔵人が奉る「松尾様」と称される神は女神とされており、古来より酒蔵が“女人禁制”とされてきたのは、蔵に女性が入ると「松尾様」がヤキモチを焼いて酒を腐らせてしまうという言い伝えによるとも一説では言われています。

「松尾様」は“日本酒醸造の祖神”として全国の酒造蔵より崇敬を受けている京都嵐山に鎮座する「松尾大社」の尊称で、平安期に大陸より持ち込んだ新しい醸造技術を以って現代の清酒醸造の基礎を確立した秦氏の氏神を、太秦「大酒神社」より摂社として奉祀したことにより、本来の御祭神である“大山咋神”(おおやまくいのかみ)と呼ばれる農耕信仰の守護神や、宗像三女神の一人である“市寸島比売命”(いちきしまひめのみこと)と呼ばれる航海の女神と混同して蔵人が信仰したことから「松尾様」なる“酒の女神”となったと思われます。

ちなみに「松尾大社」の他にも、全国の酒造家より“酒造の祖神”として幅広い信仰を受けている奈良の「三輪明神」があります。

酒蔵ではその年の酒造りに、“酒造の神”のご加護を願う風習として、杉の葉を束ね球状に造った“杉玉”(酒琳=さかばやし)を軒先に吊るします。